網走再び?札幌ビール工場あちらこちらで戦闘開始
網走再び?という、土方陣営・杉元組・第7師団ついでにジャックに上エ地とキャラ勢揃いでドンパチ始まった札幌ビール工場。
26巻はじまりはじまり!
25巻終わりに花火を見た鶴見中尉の「祭りかな」という言葉通りに、ある意味祭り開幕。
宇佐美と牛山さんが組み合ったところ見て、ぜひ一度鶴見中尉と牛山さんでも組み合って欲しいと思いました。
強い男同士による、組んだだけで瞬間的にわかる「互いの強さと評価」の部分、とても好きなので。
柔道がっつりやってる鶴見中尉だったら、どういう言葉で評価するのかなあと(ついでに鶴見中尉の強さがどのくらいなのか教えてほしい)。ぜひ聞いてみたい。牛山さんも絶対ワクワクするでしょうし。
鯉登VS杉元の白兵戦は、やっぱ杉元のほうが経験値の差で有利な感じかな。判断が早いというか。実戦経験、特に臨機応変に闘う場に合わせた喧嘩殺法的なのは圧倒的に杉元が経験積みまくってますし、戦闘における野性的な勘の良さと闘争センスも高いので。
そしてピンチに牛山さんいい仕事してくれる(笑)。
酔っぱらい杉元が酔拳ポーズ取って直後に月島さんの「ガンッ」で笑ってしまった。こういうタイミングと言うかテンポがドリフっぽくて好き。
櫓から状況観察していた尾形が「鶴見中尉に~」で銃を構えたところは、誰を狙っていたのかな。構えた途端に勇作さん登場で、びっくりしたおかげで命拾いしてますけれども。
アシリパを狙ってて「その子を撃ってはいけません」で出てきたのか、アシリパまたは他の人間狙ってて「兄様、今撃ってはいけません(狙われています)」で助けに出てきたのか。
まあどちらにせよ尾形を助けているのかなと思ったり。
(25巻からの流れをくむと「その子を撃ってはいけません」なのかな)
ヴァシリと尾形の動きは手練れの狙撃手同士の駆け引きで面白いです。相手を先読みして行動を組み立てる。お互い楽しんでますよねこれ。尾形もワクワクしてきたところで宇佐美&門倉に遭遇。
宇佐美って顔の造形パーツが仏ですけど(特に眉の形と眉と目の配置、あと唇の造形)、だからこそブチ切れ顔が余計に恐ろしい気がする。仏の顔も三度までって言うけど、四度目の顔は幼馴染み殺したあの顔なんだろうか…とつい考えてしまう。クレイジーな中身に仏の相貌というのはなんか皮肉な造形だなとも思ったり。
実は個人的に、宇佐美がなぜあそこまで「鶴見中尉の一番」に拘り、執着し独占欲爆発させることになったのかがよくわからず。
子供時代のご家庭風景見ても、いい感じのお父さんお母さんに兄弟姉妹も仲よさげで特に問題もなさそうだし、幼馴染みへのコンプレックスから?何がきっかけで「一番」にあそこまで執着するようになったのかなあと…。承認欲求で片付けるには重いし。恋か、恋なのか。
宇佐美の恋心、重い!怖い!!
アシリパさんによるジャックへのフルスイングはすげーいい音してますな。場外ホームランですねこれ。
そしてピンチに杉元登場。人殺しの風上にも置けねえぜっていいですね。そこからの目線で言いますか。たくさん人を殺しているからこそ、その理由と罪は自分で責任を負えという気持ちでしょうか。
誰から生まれたかよりも
「誰から生まれたかよりも 何のために生きるかだろうがッ」
このセリフが杉元から出たこと、聞いて欲しかったな~聞かせてあげたかったな~と思ったのが尾形。
杉元的にはすぐそこにいるアシリパさんに向けた言葉かもしれませんが。
自分の責任ではないのに、自分が努力しようとも動かすことのできない「出自」。
それによってレッテルを貼られ、本人自身がどんな考え方をし、努力し、どんな人間であろうとも、レッテルによって価値や性質を決めつけられること・本人自身の人間性を見てもらえないことに対する理不尽さへの腹立たしさや怒りというものを、以前から杉元が持っていることは描かれていて。
それは「結核」という自分ではどうにもできないもので家族全員を失い、また村から排斥され、愛する人とも別れなければならなかった苦しく辛い経験が杉元にあるからかなと思っています。
だからこそ杉元は、そういう見方や弄り方を「くだらねえ」と嫌がるのかなと。
杉元は尾形に対して「信用ならねえ」「嫌な奴」「ムカつく」「ぶっ殺す」「許さねえ」「狙撃の腕は本当にすげえ」などとは思ってますが、それらは「尾形百之助」個人に対しての一対一での感想と感情であり、彼の出自が判明しようとそれが自身の尾形に対する評価には繋げない。
「だからなんだ、尾形は尾形だろ」と言わんばかりの、杉元のそういうところがとても好きで(だから「なあんだ、ただの尾形か」のセリフが未だにとても好きなんですけれども)。
この二人は素直に時間をかけて話し込んだら、尾形が望んでいる(んじゃないかと思う)「ただの自分を見てくれる人間」がここにいたのかってなるんじゃないかなと、それはかなーり昔から思っているところだったりします。
勇作さんは妾腹だろうと兄であることに変わりなし!ということで真っ直ぐに尾形に向かってきましたけど、「兄弟」という枠あっての話だろうと尾形に思われてそうなので(勇作さんは可哀想だけど)、独立した「尾形百之助」個人を見て対峙してくれるのは杉元なんではないのかなと妄想してみたり。
尾形が本当に望んでいるものを言葉として持っているのは杉元だ、っぽい部分描写は以前からちょこちょこ散見されるんですけど、今回ホントにはっきり言葉になってくれたなあと。
合理的かつ理論的に物事を考え、一流の狙撃手としての才能を存分に持っている尾形ですが、自分自身の力ではどうにもできない(変えられない)出自のこととなると時折揺らぎを見せる。一流の狙撃手である自負もあり、他者からの評価も得ていることもわかっているのに、振り切ること・乗り越えきることができずにいる因縁。
尾形が本当に望んでいるのは「皆と同じであること・異端ではないこと」ではなく、「世界に唯一人しかいない“尾形百之助”という人間の価値を認め、愛してもらうこと」なのではないのかと思っているので、だからこそこのセリフ聞かせてあげたかったなあと。
まだまだ続くよバトルバトル
その後まさかの紅葉おろし!しかも柱の凸部分もご丁寧に外さず。さすがに皮一枚になるまですり下ろされませんでしたが。ヴァシリの頬抜きのときもだけどヘルシング読み返したくなる。
場面変わって宇佐美VS尾形。
宇佐美ってとにかく鶴見中尉の一番でありたいせいなのか、マウント取りたがりっ子だよね。
よっぽど「安いコマ」が地雷だったのか、そこむちゃくちゃ怒ってるね。
尾形は人の心がわからんちんどころではなく、一番言われたくない言葉を無駄なくスパッと選択してサクッと急所に刺すのが上手いんだなと思いました。喜ばせたり愛されたりするのは下手かもしれんが、地雷をピンポイントで探り当てるのが上手いというか。まあ嫌がられるよねそれ…。
宇佐美も地雷踏み抜いてますけど。
「商売女の子供の分際で!」の次のコマの尾形の顔。
「それを俺に向かって言ったからには、死ぬ覚悟はできてるんだろうな」と言わんばかりで最高です。尾形のそういう、やられっぱなしじゃない・やられたらやり返す根性のところ、男の意地を見せてくれるところが好きなんだ。
その後めちゃくちゃ闘う漢の顔だし、動作が早い。たまらん。
そして先程の杉元の決め台詞が再び。ん?と思ったら、杉元がジャックを突き落とし窓が割れる音で尾形が宇佐美の行方に気づくと。当人たちが意図せずして繋がってるこの流れ、にくいな~と思いました。セリフ聞かせたかった故に余計に。
宇佐美を狙撃する前の尾形のセリフは冷徹ですね。シビア。
標的から尾形の瞳までを一直線に繋がっていく流れ、杉元の脇をすり抜けて行ったからそこ撃つのかと思いきや、実際に通したのはその一つ下の階の窓なんですね。面白い。
そして25巻で土方に言っていたとおり、「狙撃兵は『人間を撃ってこそ』だ」を実践し、狙撃兵完全復活…というか狙撃手として完成させたって言っているということは以前を超えて完成形尾形になったということか。義眼がすっぽ抜けてもごきげんですね。かわいいな。
鶴見中尉と宇佐美
場面変わって鶴見中尉と宇佐美、それを見守る兵士たち。ここからピエタ像オマージュまでがホント芝居がかってて怖い。
鶴見中尉ってば宇佐美が命がけで残そうとしてる最後のセリフを遮断するし、かぶせてきた「よくやった~大切な戦友だ」のセリフは宇佐美の目を見ないで言ってるのはなぜなのか。
ここのセリフって、奉天で負傷鶴見さんに宇佐美が「月島軍曹殿に『私の戦友だ』って…アレみんなに聞こえるように言ったでしょ?」「いいなあ…僕も月島軍曹殿みたいに鶴見中尉殿から『駒』として使われたい」と言っていた(25巻)のを“希望通り”にしてあげたのか。
小指ぶっちぎられて誓いの言葉をかけられ宇佐美喜んでますけど、それ遊女が客に愛情の不変を誓う「心中立て」まんまじゃないですか…さっき尾形に向かって「商売女の~」って蔑んでたのに、皮肉すぎやしませんか。
ピエタ像の作品解説を読んでみたんですが、“ミケランジェロは死を表すものにしたかったのではなく、むしろ「宗教的な放棄のビジョンとイエスの穏やかな顔」を表現したかった。つまりキリストを通じた聖化により人と神の交わりを表現している。”とあって。
(正直何言ってるかよくわからんのですけど)
若きマリアについてはミケランジェロが「原罪のない聖母マリアは歳をとらない」と断言したそうで。
宇佐美の死は「聖なる殉職」として師団の皆に刻まれたってことでしょうか。そして鶴見中尉は原罪のない聖母マリア?(そういや聖母子と天使のオマージュも鶴見中尉の位置ってマリアですね)
だがしかし次のコマに移ってみたら、穏やかに目を瞑っていたはずのキリスト=宇佐美が目を開けて、穏やかとはちょっと言い難いような微妙な表情している。宇佐美を抱く鶴見中尉の表情は塗りつぶされて不明。怖い!
これはピエタ像が提示するイメージとは実際は異なるという暗示と受け取っていいのかな。見せかけのピエタ像的な。真実は全く異なる意味をもつというか。
尾形の言った「お前の葬式で鶴見中尉がどんな顔をするのか見たらいい」のセリフ通り、ここのコマで宇佐美だけが鶴見中尉の顔を見たんじゃないかと思うんですが、なんだかいろいろ含みがあって不穏すぎる…。
鶴見中尉は、その本心が未だにどこにあるのかわからず、故にどこまでが演技でどれが鶴見篤四郎の本心なのかがよくわからないのが恐ろしい(けど好き)。虚実を絶妙に入り混じらせたりして全てが嘘ではないやり方で人を幻惑させるがゆえに、底の見えない感じのままというか。愛について語ったりしているけど、本当に愛しているのは自分だけだったらどうしようなどと思ってみたり(それもそれでいいんですけど)。
愛ですって鶴見中尉のセリフでちょっと思い出した。日本軍についての資料あっちゃこっちゃ読んでたときに、初期の頃はそれほどお国のためにとか愛国心とかという意識が兵にあんまり浸透していなくて、そういう意識を育て持たせていくことにも苦労したとかなんとか…って目にしたような気がするんだけど、そういう意味でも鶴見さんは「愛」が重要だと指し示していたりするんでしょうか。
気になる伏線にあっちゃこっちゃヤバい状況で次巻!
結局の所、上エ地は「暗号解読には全ての刺青人皮を集めずとも可能」とここで解説するために出てきたポジということなのかな…?あとは杉元組と土方組の合流のきっかけ?
菊田さんと尾形が無言で行き交うシーン。もしかしてふたりとも中央つながりで動いているということ?
尾形の戸籍からすると、原則的には第1師団・歩兵第2連隊に所属しているはずが北海道の第7師団・歩兵第27連隊にいる理由とか関係してるんでしょうか。
房太郎は荒っぽいけど根は優しいんだろうな。アシリパと杉元に、できるならさっさと金塊争奪戦から降りて幸せになってほしいんだろうけど…。しかし杉元殴られたのは側頭部っぽいが、撃たれた場所自体は左側なんだけど大丈夫なのか(スコップの棒部分とはいえ)。
そしてピンチの杉元を助けに来たのは白石!前巻の森林伐採現場の時もだけどいいぞ白石!杉元とは一生の友達でいて欲しい。谷垣ともそうであってほしいんだけど(っていうか旅順で会っていたことをいつか思い出してほしいんだが杉と谷は)。
月島さんは情に流されるところがまた出てますね。冷徹にはなりきれなくなってきているところ、兵士としてはいかんのかもですけど嫌いじゃないですむしろ好きです。しかし直後の鯉登くんのうっかりには非常に厳しい顔してますね。
まあ長年鶴見中尉の傍にいるので、こういうちょっとした変化から「嗅ぎ取られる」ことをよくわかっているからなんでしょうけども。手放しでついていくには鯉登くんは嘘がつけないしまだいろいろと青い。思い切り「しまった」って顔しちゃってるし。大丈夫かなこの二人。
…と思ってたらラスト、門倉の悪運の強さで締めですか(笑)!鬼の形相で房太郎に迫ってきた杉元のとこはどうなるやら。ビール工場でもうひと悶着あるんでしょうか。このままするっとアシリパさん連れ去られちゃうの?
どうなる次巻!